Chapter.2 - What’s the Motor oil?

始めに、エンジンオイルがエンジン内部においてどのような役割を果たしているのか、またどのような機能を要求されるのかについてまとめておこうと思う。
エンジンオイルとは、基本的に潤滑油である。 ピストンとシリンダー壁面、クランクシャフトとコンロッドメタル部、カムシャフトと吸排気バルブなど、エンジン内部には金属同士が接触、摺動している個所が非常に多い。 これらの個所を適切に潤滑することで、破損を防止し、その部品の持つ本来の性能を発揮させることが最大の目的である。 具体的には、煽動部の金属部品間に油膜を形成することで摩擦を低減し、また金属同士の衝突の際にその衝撃を緩衝し、カジリ、焼き付きを予防し、発熱、フリクションロスを低減させる。
このように潤滑のために金属表面に油膜を形成するエンジンオイルであるが、金属表面に直接触れるものである以上、ただ潤滑できるだけではなくそれ以外の機能も当然要求される。
特に燃焼室周辺では、燃料の爆発・燃焼によって多量の熱が発生するが、この熱は当然エンジンオイルにも伝達され、油温は大きく上昇する。 この熱に耐えられず、変質・劣化してしまうようなオイルでは役に立たない。 また、いくらオイルが耐えられるからといって、熱をひたすら溜め込んでいてはエンジン本体にまでダメージを与えてしまう為、エンジン外部に熱を逃がす必要が生じる。 エンジン内部で循環することで、熱源から離れた個所へ熱を運搬することもエンジンオイルの役割となる。
エンジンを構成する金属の内、鉄の占める割合はかなり大きいのが一般的であるが、鉄は水や空気に触れることで酸化(錆)が進行しやすく、可能な限りこれらが金属表面に触れないことが理想的である。 エンジンオイルには、摺動部位外にも、こういった鉄の表面に油膜を形成し、また形成された油膜をエンジン停止後も長時間維持することで、鉄を錆から守る事が求められる。 摺動部において、エンジン停止後に長時間油膜が維持されることは、次回再始動時に異常磨耗の原因となるドライスタートを防止することにも繋がる。
燃焼室内部では、燃料の爆発・燃焼の際に高い圧力が発生し、この圧力を有効にピストンに伝達することが、エンジンが正常に動作し、性能を発揮する前提条件となる。 ピストンとシリンダーの間には隙間があり、ピストンのコンプレッションリングによってこの隙間の気密が保たれているがそれは完全ではない。 この隙間を油膜で埋め気密を保つことで、より効率よく燃焼圧力をピストンに伝達することが可能となる。 多走行エンジンやハードコンディションで使用されたエンジンなどでは、磨耗やピストンリングの張力低下によりエンジンの本来持っている気密を保つ能力が低下している場合があるが、エンジンオイルの性能が高い場合これをある程度カバーすることも可能である。 
近年特に重要視されているエンジンオイルの機能に、清浄分散能力が挙げられる。 エンジンが作動した際に発生する、カーボンやスラッジといった性能低下に繋がる汚れを洗浄・分解しオイル内に溶融させることで固形化、堆積を防止し、定期的なオイル交換とあわせてエンジン内部をクリーンな状態に保ち、長期間性能を維持し寿命をより延長させることが可能となる。 またクリーンなイメージを顧客にアピールすることで販売戦略的に有利になるという面もあり、最近ではオイルのみではなく、ハイオクガソリン等の燃料にもこういった性能を持たせる傾向が見られる。
この他に、蒸発特性に優れたオイルは通常運転時のオイル消費量を減らすことが可能であり、触媒の保護や排出ガスの浄化にも効果が期待できる。
また一般にもっとも期待される性能の一つに、劣化の少ない交換サイクルを長く取れる、耐久性の高さというのもある。
このように、エンジンの状態を維持し、最高の性能を引き出すことがエンジンオイルの役割、機能である。