8月30日

この日はいよいよ帯広へ移動し、CUSCOチームと合流である。 朝食を摂った後、一路帯広へ。 やはり北海道は広く、高速道路を使いながらの移動でも結構な時間がかかる。 途中何度か休憩をはさみ、昼食を摂ったあと、いよいよCUSCOチームの宿泊しているホテルへ到着。 飛行機で移動してくるキャロッセ社長をしばらく待って合流、挨拶をし、Rally JAPANロゴ入りの、グリーンのチームパスとサービスパークの車両通行証(チーム補助車両)を受け取る。 これで公式に、千葉からやってきた素人集団が、CUSCOチームのメンバーとしてオーガナイザーから認められたことになる。


戴いたパスを首に下げ、気持ちも新たになったところで、早速北愛国のサービスパークへ移動し、挨拶もそこそこにメカニックの方の作業を見学させてもらう。 この日は車検日ということで、CUSCOメカニックの方は朝から各部のチェックをされていたが、自分たちがチームに合流した時は、本番用のオーリンズサスペンションへの交換と、それに伴うアライメント調整作業をされていた。 このオーリンズ、市販車両にメーカーが純正装着するようなダンパーと比較すると、何か間違えたのではないかってぐらいストロークが長く、かつ太い。 これはハイスピードでグラベルを走り抜ける際に、少しでもタイヤの接地性を向上させ、また、市販車では想定されていないようなジャンプ、ドリフト走行に耐えられるよう強度を持たせた結果である。 シェルケース容量が大きく、別タンと合わせて十分なオイル量があるため、過酷な条件下でも安定した減衰力を得ることができるが、フリクションロスが増大する為こういった設計をする例はインターラリー用以外あまり無い。
オーリンズを車体へ装着し終わると、いよいよアライメント調整である。 今回我々学生が参加させてもらっているCUSCOラリーチームは、日本のラリー界では伝統のある名門チームである。 他のプライベート参加チームとは違うところを早速見せ付けられたのがこのアライメント調整作業。 なんと、スバルの関連会社で、PCWRCシリーズ優勝実績もあるSYMSチームの設備を借りて、しかも結構な時間をかけて、念入りに調整をしていた。
調整作業は、まず現在の数値を測定するところから始まる。 フラットベースと呼ばれる、金属製の精密な枠に調整可能な足がついていて、足の高さを調整することで正確に水平な地面が得られる台に車を乗り入れ、メジャーで車高(ホイールアーチハイト)をmm単位で測定、デジタル式のキャンバーゲージでキャンバーの数値を測定、その結果に基づき調整を行う。 車高調整は一般的な車高調整式サスペンションと同じネジ式調整機構、キャンバー調整は、ストラットとハブを接続する2本のボルト穴の上側に、偏芯したシムをはめて調整するタイプ。 調整完了後、サービスパーク内を少し走らせ、サスペンションを落ち着かせて再測定。 以降繰り返しとなる。 なお、トーはここでは調整は行っていない。


日も暮れるころ、アライメント調整も完了し、いよいよ車検である。 車検場テント前に車を並べ、順番待ちをする。 その間に学生は先回りして車検場内部を見学させてもらうことができた。 車検の大まかな流れとしては、ガス検->灯火類、ワイパー、ホーン等->体重測定->安全装備等内装->外装、下回り(トランスミッションシーリング)->エンジンルーム内(ターボシーリング)といった感じである。 トランスミッションやディファレンシャル、ターボチャージャーといった部品は、スペアパーツも車検場に持ち込み、検査を受けた後にシーリングを取り付けなければならない。 騒音防止のため車検場内部では基本的にエンジンを始動してはならず、移動は全て人の手で車を押すことによって行う。 ほとんどのチームがオフィシャルに押してもらっていたが、ここは我々学生の出番、CUSCOチームの本番車はしっかりと押させてもらった。
無事車検をクリアし、フロントフェンダーに車検ステッカーを貼り付けてもらった後は、翌日に備えブース内を整理、片付けて本日は解散。 夕食はCUSCOチームの宿泊しているホテルでいただいたが、ここでドライバーの柳沢さんと、コドライバーの美細津さんに初めてお会いできた。 この日はクルーのお二人は1日レッキをされていた。 おつかれさまです。
ちなみにレッキとは、本番に走るコースをあらかじめ走り、ペースノートと呼ばれるコースブックを作成する作業のことである。 本番はこのとき作成したペースノートをコドライバーが読み上げることで、先が見えないコーナーでも先を知り、常にマシンの性能を引き出して走ることができる。 レッキには本番車は使用できず、使用する車両へのスポンサーステッカーの貼り付けも認められていない。 走行速度が60km/h以下に制限されており、本番車並みの補強をする必要も無いことから、レンタカーをレッキ車として使うチームもある。