Chaoter.4 - Standard and Properties

代表的なベースオイルに関してまとめてみたが、添加剤に関する内容に移る前に、ここで市販オイルに関する規格、代表的性状についてまとめておこう。
エンジンオイルに関する規格としては、

  • SAE(Society of Automotive Engineers)による粘度分類
  • API(American Petroleum Institute)による性能ランク分類
  • ILSAC(International Lubricant Standardization and Approval Committee)による性能ランク分類
  • ACEA(Association of European Automobile Constructors)による性能ランク分類
  • 日本自動車技術会規格組織(JASO)による品質規格

等があり、そのオイルの品質、性能を判断する基準になるわけであるが、規格の種類も内容も多くなかなか理解されていない。
そこでまずは各規格の内容を一覧表形式にしてみることにする。


4-1. SAE Viscosity Grades

SAE粘度分類とは、米国自動車技術者協会によって定められ、0Wから60までの12段階に分けられ、その番号が大きいほど粘度が高い事を表す。 数字の後に付加されるWは、Winterを表し、低温時の粘度特性を表し、Wが付加されていないものに関しては高温時の粘度特性を表す。 各グレードの性状は下表の通り。

SAE粘度グレード低温粘度高温粘度
CCS粘度(cP)/温度(℃)ポンピング粘度(cP)/温度(℃)動粘度(cSt)(100℃)高剪断における粘度(cP)(150℃、106S-1最小値)
最低最高
0W6200/-3560000/-403.8--
5W6600/-3060000/-353.8--
10W7000/-2560000/-304.1--
15W7000/-2060000/-255.6--
20W9500/-1560000/-205.6--
25W13000/-1060000/-159.3--
20--5.6<9.32.6
30--9.3<12.52.9
40--12.5<16.32.9 (0W-40.5W-40.10W-40 grades)
40--12.5<16.33.7 (15W-40.20W-40.25W-40.40grades)
50--16.3<21.93.7
60--21.9<26.13.7

オイルの粘度は温度によって変化する為、測定結果を比較する際には同一の温度でのデータを比較する必要があるが、この基準となる温度は国際的な取り決めにより40℃および100℃となっている。 単一の粘度記号を持つシングルグレードと複数の粘度記号を持つマルチグレードがあり、シングルグレードオイルは使用可能な温度範囲が狭く、使用条件によって複数のオイルを使い分ける必要があり、現在ではレース用などに使われている。 一方、マルチグレードオイルは使用可能な温度範囲が広く、様々な使用条件に単一のオイルで対応できるようになっている。
上表に記載されている項目の内、”粘度(cP)”は絶対粘度とも呼ばれる。 SI単位系ではPa・s(パスカル秒)と表されるが、オイル業界では慣例としてCGS単位系のcP(センチポアズ)が用いられる。
二枚の並行板の間に潤滑油をはさみ、一方の板を固定し、距離yだけ離れた他方を速度uで動かすと、潤滑油に速度勾配が発生する。 このとき速度uで板を動かす為には力Fが必要であり、速度勾配は剪断速度である。 接触面積がAであるとき、単位面積当たりに必要な力F/Aは剪断応力である。 絶対粘度μは力Fと接触面積Aならびに速度勾配とで次のように定義される。
F=μA(θu/θy)
このとき必要な力Fは速度勾配と流体の絶対粘度μに比例する。 絶対粘度μが速度勾配に依存するような場合は、非ニュートン流体と呼び区別される。
“動粘度(cSt)”は、絶対粘度を比重で割ることによって求められる。 SI単位系ではm2/s(平方メートル毎秒)と表されるが、こちらも慣例によりCGS単位系のcSt(センチストークス)が用いられる。 実際のオイル粘度を計測する際、通常は毛管粘度計によって動粘度を計測し、計算によって絶対粘度を算出する。
CCS粘度とは、Cold Cranking simulator粘度と呼ばれ、冬季の低温始動性の目安となる粘度基準である。 各グレードに定められた温度で、絶対粘度を規定よりも小さい数値とすることが求められる。 ポンピング粘度とは、各グレードに定められた温度で、絶対粘度を通常オイルパンからオイルを汲みだせる限界とされるよりも小さい数値とすることが求められる。 動粘度は100℃時に、各グレードに定められた範囲に動粘度を収めることを求められる。 高剪断における粘度とは、HTHSV(High-Temperature High-Shear Viscosity)とも呼ばれ、高温時の高剪断環境下における絶対粘度が、各グレードに定められた数値を上回る事が求められる。 HTHSVは、一般向けエンジンオイルがシングルグレードからマルチグレードに進化する中で、粘度指数向上のために添加されたポリマー分子が高温下で分解することで粘度指数が低下し、特に動弁系に不具合が発生する可能性を問題視され定められた基準で、その数値が2.6を下回ると油膜切れによる潤滑不良が発生するとされる。


4-2. Viscosity index

粘度分類に続き、次は粘度指数(VI)である。
類似した名称で非常に紛らわしいが、粘度指数とは粘度の温度依存度を表す指数で、40℃と100℃での動粘度を計測し、その数値の変化量から算出する。 古くは、Pennsylvania州Bradford油田で採集されるパラフィン系オイルの指数を100、Florida州Gulf coast油田で採集されるナフテン系オイルの指数を0とした相対指標で、試料の40℃における動粘度をU、100℃における動粘度をY、Bradford産無添加鉱物油の100℃における動粘度をH、Gulf coast産無添加鉱物油の40℃における動粘度Lとした場合次の式で表される
VI={(L/Y)-(U/Y)}/{(L/Y)-(H/Y)}x100=(L-U)/(L-H)x100
しかし、近年のオイルの高性能化、マルチグレード化に伴い、化学合成基油等従来のベースオイルの粘度指数を上回るベースオイルの普及、粘度指数向上剤添加の常識化により、粘度指数が100を超えるオイルがほとんどとなっている中で、従来の計算式では適切に粘度-温度特性が表せない為、粘度指数100以上のオイルに関しては次の式で表される。
VIE=(10^N-1)/0.00715+100(※)
N=(logH-logU)/logY
なお、上記二式は、日本工業規格(JIS)“K2283 原油及び石油製品 ― 動粘度試験方法及び粘度指数算出方法”に、それぞれA法(粘度指数100以下)、B法(粘度指数100以上)として定められている。


4-3. Flash point

オイルに火種を近づけた時に、引火する最低温度を引火点という。 エンジンオイルが燃焼する場合、液体の状態にあるオイルがそのまま燃えるのではなく、その表面から蒸発して発生した気体に、空気の中に含まれる酸素が混合することで発生する可燃性蒸気が燃焼する。 このことから、引火点は単に引火のしやすさを表すだけでなく、そのオイルが加熱された際の蒸発しやすさを見ることができる。
引火点の試験法は極めて単純で、規定条件下において試料を加熱しながら、一定間隔をあけて点火源を試料に近づけ、試料表面の可燃性蒸気に点火した温度が引火点として記録される。 引火点は物質に特有な恒数ではなく、試験機の種類や試験方法によりその値は変化する。 引火点試験機には大きく分けて密閉式と開放式の二種類があり、密閉式は試料の上に蓋をかぶせ、点火源を近づける時だけ蓋の一部を開ける方式で、開放式は蓋をかぶせない方式である。 密閉式の方が、蓋がある分だけ試料表面の可燃性蒸気の濃度が高くなり、引火点は低く計測される。
JIS規格” K2265 原油及び石油製品 ― 引火点試験方法”では、引火点が95℃以下の原油、ナフサ、灯油などにはタグ密閉式を、引火点が50℃以上の軽油重油などにはペンスキー・マルテンス密閉式を、引火点が80℃以上の潤滑油、石油アスファルト、流動パラフィンなどにはグリーブランド開放式をそれぞれ使うように規定されている。 また、JIS規格には規定されていないが、高粘度試料の引火点を測定する際に、従来の試験機を用い、外浴を恒温水槽に変え、極めてゆっくり試料温度を上げていく平衡法と呼ばれる方法がISO(International Standards Organization)規格などにある。


4-4. Pour point

流動点とは、オイルが流動しなくなる最初の温度よりも2.5℃高い温度のことで、低温での流動性を示す指標の一つである。
純物質は、一定の温度(融点)で液体から固体に変化するが、多成分の混合物であり、元々高い粘性を持つエンジンオイルは、はっきりとした融点を示すことは無い。 そこで一定の条件下で流動しなくなる温度を測定し、これを流動点と呼ぶ。
JIS規格”K2269 原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法”によると、試験管に取った試料を46℃まで予備加熱した後、規定方法で冷却していき、予期流動点から10℃高い温度から測定を開始して、2.5℃下がるごとに試験管を冷却浴から取り出して観察する。 こうして試験管を横にしても5秒間全く動かなくなる温度を測定し、それより2.5℃高い温度を流動点とする。
エンジンオイルをはじめとする潤滑油においては、一般に粘度の低いオイルは流動点も低く、粘度の高いオイルは流動点も高くなる。 自動車を使用する環境の温度が流動点近く、もしくはそれ以下の場合、特に始動時において、潤滑性能が失われる、オイルパンからオイルを吸い上げることができない等の問題が発生する為、流動点降下剤の添加などの対策を取る必要がある。


4-5. API Engine Oil Service Categories

APIサービスカテゴリーとは、EOLCS(Engine Oil Licensing and Certification System)(※)によって定められた、エンジンオイルの性能ランク、品質に関する規格である。 アルファベット二文字で表記され、ガソリンエンジン用は一文字目が”S”、ディーゼルエンジン用は一文字目が”C”で始まり、二文字目は制定された順に”A”からスタートしている。 現在、ガソリンエンジン用では”SM”、ディーゼルエンジン用では”CI-4”が最新の規格になっているが、現在日本国内で一般に使用されているのはガソリンエンジン用で”SJ””SL””SM”の三種、ディーゼルエンジン用で”CF””CF-4”の2種である(旧製品・輸入品ではこれ以外の規格を使用している場合もある)。 規格の内容は下表の通り。

ガソリンエンジンオイル
記号説明
SA無添加純鉱物油。添加油を必要としない軽度の運転条件のエンジン用。特別な性能は要求されない。
SB加油。添加剤の働きを若干必要とする軽度の運転条件用。スカッフ防止性、酸化安定性および軸受腐食防止性を備えることが必要。
SC1964年から1967年式までの米国乗用車およびトラックのガソリン専用。ガソリンエンジン用として、高温および低温デポジット防止性、摩耗防止性、さび止め性および腐食防止性が必要。
SD1968年式以降の米国乗用車およびトラックのガソリン専用。デポジット防止性から腐食防止性まで、SCクラス以上の性能が必要。SCクラスの用途にも使用可能。
SE1971年以降の一部および1972年式以降の米国乗用車および一部のガソリントラック車用。酸化、高温デポジット、さび、腐食などの防止に対し、SA、SC油よりもさらに高い性能が必要。
SF1980年式以降の米国乗用車および一部のガソリントラック車用。酸化安定性および耐摩耗性においてSEよりもさらに高い性能が必要。
SGエンジンメーカー推薦下で運転される1989年以降のガソリン乗用車、バン、軽トラックに適応。SG油はAPIサービス分類のCC級(ディーゼル用)の性能も含み、以前の等級に比べてデポジット、酸化、摩耗、さび、腐食などの防止に対しさらに高い性能が要求される。
SHエンジンメーカー推薦下で運転される1993年以降のガソリン車に対応。SGの最低性能基準を上回る性能を有し、耐デポジット性能、耐酸化性能、耐摩耗性能および耐さび性能、防食性能でSGに代わるもの。DID-CID-A-A-52309およびILSAC/GF-1などエンジンメーカー規格のシークエンス試験要求性能に合致していること。
SJエンジンメーカー推薦下で運転される1996年以降のガソリン車に適用。SHの最低性能基準を上回る性能を有し、耐ブラックスラッジ性能、耐酸化性能、耐摩耗性能および耐さび性能、防食性能でSHに代わるもの。ILSAC/GF-2など、エンジンメーカー規格のシークエンス試験要求性能に合致していること。
SLエンジンメーカー推薦下で運転される2001年以降のガソリン車に適用。SJの最低性能基準を上回る性能を有し、高温時におけるオイルの耐久性能・清浄性能・酸化安定性を向上すると共に、厳しいオイル揮発試験に合格した環境対策規格。
SMこれまで一番厳しい規格であったSL規格よりも、省燃費性能の向上、有害な排気ガスの低減、エンジンオイルの耐久性を向上させた環境対応オイル。またこれまで試験の無かった劣化油の低温粘度を計る試験が追加され、低温流動性、酸化劣化に優れたベースオイルを使用する必要がある。

ディーゼルエンジンオイル
記号説明
CA軽度から中程度条件のディーゼルおよび軽度条件のガソリンエンジン用、ただし良質燃料使用を条件とし、この条件下での軸受腐食防止性および高温デポジット防止性が必要。摩耗防止性およびデポジット性は必要としない。
CB軽度から中程度条件のディーゼルエンジン用であるが、低質燃料使用時の摩耗およびデポジット防止性を必要とする。高硫黄分燃料使用時の軸受け腐食防止性および高温デポジットも必要。
CC軽度過給ディーゼルエンジンの中程度から過酷運転条件用。高負荷運転のガソリンエンジンにも使われる。軽度過給ディーゼルでの高温デポジット防止性、ガソリンエンジンでのさび止め性、腐食防止性および低温デポジット防止性が必要。
CD高速高出力運転での高度の摩耗およびデポジット防止性を要求するディーゼルエンジン用。広範な品質の燃料を使用する過給ディーゼルを満足させる軸受け腐食防止性および高温デポジット防止性が必要。
CE1983年以降製造のヘビーデューティーの過給ディーゼルエンジンで低速高荷重と高速高荷重で運転するものの両方に用いる。CD級よりさらにオイル消費性能、デポジット防止性能、スラッジ分散性能を向上させたもの。
CF建設用機械および農業用機械などいわゆるオフハイウェイディーゼルエンジン用に開発された油で、CDに代わるものとして、性能を向上したもの。
CF-41990年代の低硫黄(0.5%以下)の軽油を使用するオンハイウェイ大型トラックなど最も過酷な条件で運転されるディーゼルエンジン用で、CEに比べ特にデポジット性能、スラッジ分散性の向上を図るとともに、熱安定性およびオイル消費防止性を向上したもの。

(※) EOLCSとは、API、SAE、ASTM(American Society for Testing and Materials)の三者によって設立された、エンジンオイルの品質規格認証システムである


4-6. ILSAC Standard

ILSAC規格とは、日本自動車工業会(JAMA)とGM、Ford、DaimlerChryslerによって組織される国際潤滑油規格化認証委員会によって制定された規格で、APIサービスカテゴリーに低公害性能、省燃費性能、耐久性能を付加した規格となっている。 SAE粘度分類における”30”以下のオイルが対象で、API/SHに対しGF-1、API/SJに対しGF-2、API/SLに対しGF-3、API/SMに対しGF-4という規格になっている。
近年環境問題への意識が高まるにつれ、年々世界的に自動車に対する規制が厳しくなり、その波はエンジンオイルの規格にも及んでいる。 新車時の性能では、排出ガス中の有害物質を徹底的に削減し、”大気よりもクリーンな排気”までをも実現しつつあるが、後処理システムの性能維持、耐久性の確保という点ではまだまだ不十分な部分は多い。 日本国内においても、燃料のサルファーフリー化など、徐々に対策は進んでいるが、ILSAC/GF-4規格はこうした流れに合わせて定められた規格である。 以下にGF-3規格からの変更点とその意義についてまとめる。
・エミッション、触媒被毒対策
エンジンオイルによる被毒は、排出ガスを浄化する為の触媒にとって大きな問題の一つである。 ピストン・シリンダー壁間や動弁系の潤滑を行う為、オイルの一部は燃焼室周辺で蒸発し、その成分は排気ガスとともに後処理システムを通過する事になる。 この際、触媒にダメージを与えるリン、硫黄の低減、そもそもの蒸発量の低減が必要である。 一般にエンジンオイルの高温化での蒸発量は粘度が下がると増える傾向にあるが、下にも述べる省燃費性の面から、低粘度化の要求は強く、蒸発量の低減と以下に両立するかが課題となっている。 GF-4規格では、GF-3規格で0.1wt%が上限であったリン量を0.06wt%以上0.08t%以下とより厳しい数値にするとともに、新たに硫黄量を0.5wt%に制限している。 リン量の低減には、耐磨耗性向上剤及び酸化防止剤として添加されているZnDTPの量を削減する必要があるが、これによる耐磨耗性、酸化安定性の低下、加えて省燃費性への影響も懸念される為、代替添加剤による対策が必要になる。
・省燃費性
原油価格の高騰による燃料価格の向上、地球温暖化問題への対策などの面から、よりいっそうの省燃費性の向上が求められている。 2008年制定予定のSN/GF-5規格においては、SAE粘度分類10(※)の新設も検討されるなど、今後よりいっそうの低粘度化が進むと思われる。 GF-4規格においては、GF-3規格での基準よりもさらに0.2〜0.3%高い燃費基準を定めており、オイルの低粘度化に加え摩擦調整剤の添加量が省燃費性向上の鍵を握るとされているが、過度の摩擦調整剤添加は酸化安定性を損なうため、省燃費性とロングドレイン性を両立させる添加剤配合技術の確立が必要とされている。 なお、現状のGF-4規格の燃費基準に関しては、米国での自動車事情に合わせ試験エンジンに転がり動弁系のエンジン(Ford製4.6L V8 OHVエンジン)を使用しており、すべり動弁系のエンジン(OHCエンジン)が大半を占める国内事情を十分に反映できていない為、摩擦調整剤の使用を評価でき、コールド燃費、燃費維持性能を加味した、すべり動弁系エンジンに適した新たな試験法の必要性も指摘されている。
・酸化安定性
酸化安定性は、ユーザー利便性の向上、環境保護に繋がる廃油量の削減に必要なロングドレイン性の向上に直接繋がる性能であり、GF-4規格ではGF-3規格に対して試験条件を約2倍に設定し、よりシビアな酸化条件でテストを行うなど非常に重視されている性能である。 酸化安定性向上には、ZnDTPの添加が有効であり、試験条件の過酷度強化により必要な処方量が数倍になることも考えられるが、上にもあげた通り触媒被毒対策のためにその使用可能量は制限される。
・高温デポジット対応
エンジンを長時間運転すると、燃料、オイル、あるいはそれらの不完全燃焼生成物が各部に堆積する。 GF-4規格においては、特に高温化で酸化したオイルがピストンに堆積する量を測定するTEOST試験の基準が引き上げられた。

(※) 10Wではなくて10! 0W-10なんてオイルが市販される日も近い!?


4-7. JASO Standard

日本自動車技術会規格組織は、オイルの最低品質に関する多くの規格を制定しており、国際規格であるISOもこのJASOに準拠している部分が多い。 その中でも、市販オイル向けに定められ、使用されている規格を、以下に一覧形式で示す。

  • API/CF-4以降の規格に該当する、国内の自動車事情に合わせたディーゼルエンジン用オイルの品質・性能に関する独自規格。 (DH-1, DH-2)
  • API/SM等4輪車向け規格に準拠した最近のオイルは、トランスミッションの潤滑油を兼ねている場合が多い2輪車に不適格なため、4サイクルエンジン搭載の2輪車向けに定められた規格。 (MA, MB)
  • APIやACEAといった規格は基本的に4サイクルエンジン向けの規格なので、2サイクルエンジン向けに定められた規格。 (FA, FB, FC)


4-8. ACEA Oil Classifications

欧州自動車工業会によって定められた規格。 APIのヨーロッパ版に当たり、欧州メーカー製の自動車にはACEA規格のオイル使用が推奨される。 API規格と比較し、内容に大きな差は無いが、API/ILSAC規格が省燃費性能、環境性能を重視する傾向があるのに対し、ACEA規格はエンジン清浄性能、耐久性を重視する傾向がある。 規格の内容は下表の通り。 -(ハイフン)の後の02、96等の数字は制定年を示す。

A sequences(ガソリンエンジン用)
説明
A1-02フリクション、低粘度、省燃費油
A2-96Issue3一般普及油
A3-02高性能エンジン油、ロングドレイン油
A4将来の高性能ダイレクトインジェクション車用エンジン油(未制定)
A5-02高性能エンジン油、ロングドレイン油、省燃費油

B sequences(軽負荷ディーゼルエンジン用)
説明
B1-02フリクション、低粘度、省燃費油
B2-98Issue2一般軽負荷副燃焼室式エンジン油
B3-98Issue2高性能軽負荷副燃焼室式エンジン油、ロングドレイン油
B4-02軽負荷直噴式エンジン油
B5-02フリクション、低粘度、省燃費油、ロングドレイン油

E sequences(高負荷ディーゼルエンジン用)
説明
E1廃止
E2-96Issue4自然吸気及びターボチャージャーの高負荷エンジン油
E3-96Issue4Euro1/2排ガス規制対応エンジンでの高負荷運転、ロングドレインに対応
E4-99Issue2Euro1/2/3排ガス規制対応エンジンでのE3以上の過酷な負荷、ロングドレインに対応
E5-02Euro1/2/3排ガス規制対応エンジンでのE4以上の過酷な負荷、ロングドレインに対応。グローバルディーゼルエンジン油規格を目指す。


4-9. Other Standard

一般に市販されるオイルで使われている代表的な規格をまとめてきたが、ここでそれ以外の規格にも少し触れておこう。 但し、これらの規格はあまり一般向けではない場合が多いので詳細は略す。

  • MIL Spec ・・・ アメリカ軍規格。 一部の特殊な物を除きAPIと大差ないものが多い。
  • 防衛庁規格(NDS) ・・・ MIL Spec日本版。
  • ASTM ・・・ 試験法の制定、改定。 性能評価。
  • その他にもメーカー独自規格等もある。(マツダのECOとか)